【1人の男が車の安全性を変えた!】60年間形を変えない3点式シートベルトの開発秘話

Nils Bohlin氏

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今では当たり前の安全装置となった3点式シートベルトが開発されてから57年がたったそうです。

そこで今日はそんな3点式シートベルトの開発秘話をご紹介したいと思います。

3点式シートベルトの開発者は元々脱出装置の開発者?

Nils Bohlin氏

Nils Bohlin氏

北欧の自動車メーカー「ボルボ」がNils Bohlin氏を会社初の安全技師として雇ったのは1950年代のこと。
彼は元々Saabという会社でパイロットのための飛行機脱出装置の開発をしているエンジニアでした。

そんな、パイロットを運転席からいかに脱出させるかを考えていたBohlin氏が、ボルボへ移り、ドライバーをシートに固定する装置を開発することになるのです。

安全性に課題のあったシートベルト

まだ安全装置の搭載が義務化されていなかった1950年代から、ボルボはシートベルトを標準装備として、採用していました。

しかし、当時のシートベルトは、現在の3点式とは違い、腰周りを2点で留める、2点式のシートベルトです。

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ただ、この2点式シートベルトは、低い速度で衝突した時は問題ありませんが、高速での衝突となると、乗員の腰に強い衝撃が集中するということと、上半身が前方に放り出されるような挙動となることで、フロントガラスに頭部が強く叩きつけられるということが課題となっていました。

より安全なシートベルトの開発

そこで、Bohlin氏は、ボルボでより安全なシートベルトの開発に取り組み始めます。

そんな最中、Bohlin氏に先駆けて、アメリカの研究者Roger Griswold氏とHugh DeHaven氏が1955年の6月14日に世界で初となる3点式シートベルトの特許を取得しました。

彼らが開発した「CIR-Griswold restraint」と呼ばれる3点式シートベルトは、2本のベルトがちょうどお腹あたりで1つになり、腰ベルトに取り付けるような構造となっていました。

「CIR-Griswold restraint」

「CIR-Griswold restraint」

共同開発者の1人であるHugh DeHaven氏は、第一次世界大戦中パイロットとして活躍した人物で、飛行機のベルトから、ヒントを得たと言います。

しかし、彼のこのアイデアが実際に製品として世の中に出ることはありませんでした。

おそらく、装着する時の複雑さや装着時の煩わしさが懸念されたのではないでしょうか。

ボルボのBohlin氏は、このHugh DeHaven氏らが発表した3点式シートベルトに改良を加える形で、今私たちが使っているシートベルトを開発しました。

そして、まず最初にスウェーデンで特許を取得しました。
1958年のことです。

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Bohlin氏の特許

広く普及した3点式シートベルト

Nils Bohlin氏とシートベルト

Nils Bohlin氏とシートベルト

このBohlin氏のシートベルトは、簡単に装着できることと、確実に人の硬い部分(腰や肩)を押さえることができることが評価され、1959年からボルボの全ての車に標準装備されることになりました。

その後、ボルボは車の安全の普及のため、このシートベルトの特許を解放したことで、他の自動車メーカーが無料でシートベルトを搭載できるようになりました。

そして、最初の製品化から、たったの4年で、シートベルトの搭載が義務化されました。

Bohlin氏が開発したシートベルトは、自動車120年の歴史の中で、最も重要な安全装備だと言われています。

1999年には、自動車の安全に対する多大なる功績が認められ、Bohlin氏は自動車技師栄誉の殿堂となっています。

2002年にBohlin氏は亡くなりましたが、その年ボルボは40年間でシートベルトが救った命は100万人を越えると発表しました。

ボルボが3点式シートベルトの特許を解放しなければ、Bohlin氏は大金持ちになっていたかもしれませんが、それと同時に現在のような安全な車はなかったかもしれません。

ボルボという自動車メーカーとそのエンジニアだったBohlin氏の手によって現在の車の安全が実現したと言っても過言ではないのではないでしょうか。

みなさんはどう思われたでしょうか?

約60年間形を変えない安全装備に今日も私たちは守られているのです。

私も一人のエンジニアとして、いつまでも形を変えないこのような部品を開発したBohlin氏を心から尊敬するとともに、自分も彼のようなエンジニアになりたいと強く思わされました。

参考:History

片平太一

片平太一

投稿者プロフィール

交通事故で友人を亡くしたことをきっかけに、車の安全エンジニアとして働くことに。Car Talkでは、車の安全に関する情報を中心に発信する。

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